全養協通信 NO.251 日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」への対応

厚労相 明日ママ、影響調査へ「協議会に確認」

スポニチ 2014年2月3日

 田村憲久厚生労働相は3日の衆院予算委員会で、日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」が児童養護施設の子どもに与えている影響を調査する方針を示した。「入所している子に自傷行為があったとの報道があるので、全国児童養護施設協議会に確認して調査したい」と述べた。
 同協議会は日テレに送った抗議書で、放送を見た女子児童が自傷行為をして病院で手当てを受けるなど悪影響が出ているとして、番組内容の変更を求めた。

児童養護施設のいま ドラマでは見えぬ現実

佐賀新聞 2014年02月03日

 刺激的な内容が「誤解や偏見を生む」として批判の声が上がったテレビドラマ「明日、ママがいない」。その舞台となっている児童養護施設は近年、虐待を受けたり、障害のために親と離れて暮らさざるを得ない子どもたちの受け皿になっている。佐賀県内の施設を訪ね、フィクションではない現実を見つめた。
 児童養護施設は、親の死亡や行方不明、拘禁、貧困などさまざまな事情で、家庭で生活ができない子どもたちを受け入れ、自立へとサポートする施設。県内では6施設に2歳から18歳までの229人(今年1月1日現在)が生活する。
 国の調査によると、1977年には約4割を占めていた親の死亡や行方不明が近年は1割にも満たず、虐待が半数を超え、何らかの障害のある子も2割を上回る。「多世代同居が一般的で住民同士のつながりが深かった昔に比べ、今は親が孤立し、手のかかる子を育てきれなくなっている」。ある施設長の実感だ。

愛情受けられず
 ストレスを暴力に訴える子、リストカットする子、おねしょが治らない子、発達障害や知的障害の子もいる。「親から愛情を受けられず、人を信用できない子も少なくない。望んでここにいる子はいないから」と施設長。専門的なケアのため、心理担当職員の配置や居室の小規模化なども進んでいる。
 県中部のある施設。「みんなと一緒には食べたくない」。夕食の時間、10代の女の子は、部屋を出てこようとはしなかった。親からの虐待が理由で入所した彼女の「自己肯定感」の低さが、職員には気がかりになっている。最近、周りの子が笑っているのを「私のことを笑っている」と話すなど、精神的に不安定になっている。みんなと一緒にいたがらず、事務室で過ごすことも多い。

体験思い出させる
 「じゃあ、みんなが食べた後、一緒に食べようか」。職員はそう声をかけた。「まずは悩みを受け止め、できる限り話を聞いてあげる。怒鳴ったり、無理やり言うことを聞かせようとしても、解決にはならない」という。こうした日常を重ねる現場にとって、ドラマで描かれた虐待や暴言のシーンは「子どもたちに過去の体験を思い出させる」との懸念は強い。ドラマの世界とはいえ看過できない実情が横たわる。
 一方、施設側には、親のいる子どもたちを再び家庭に戻すことも大きな課題だ。家庭支援専門員を配置して、親子の関係づくりに力を入れているが、「一時帰宅させても、食事がコンビニ弁当だったり、生活リズムが狂ったりする子もいる。親の意識を変えるのは難しい」(ある施設長)。退所となる高校卒業時まで施設で暮らすケースも少なくない。
 その後の進路も、親の支援も受けられないため、経済的困窮が影を落とす。大学などへの進学は難しく、寮付きの職場を探さざるを得ない子も。退所後の就労に向け昨年10月、鳥栖市に県内初の自立支援ホームがオープン。景気回復がまだ実感できない経済情勢の中で、どう社会に送り出すか、模索も始まっている。
 時代とともに社会や家庭の「ひずみ」を映し出す児童養護施設。演出や描写の是非はともかく、その存在に、あらためて光を当てたという意味では、ドラマの効用はあったのかもしれない。

赤ちゃんポスト、もう一つの試み 相談24時間、救われた命 

産経新聞 2014年2月2日

 日本テレビ系ドラマ「明日(あした)、ママがいない」をめぐり、親が育てられない子供を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する熊本市の慈恵病院などが人権侵害を訴えている問題。主人公が「ポスト」とあだ名されたように病院の活動は「ゆりかご」ばかりが強調されるが、同病院は望まぬ妊娠に悩む女性への相談を通じ、特別養子縁組を6年8カ月で190組成立させている。これは全国の成立数の1割近くに当たる。地方都市の一民間病院は、どんな取り組みを進めているのか。(徳光一輝)
 千葉県南房総市の自然公園で昨年末、生後すぐの男児の遺体が見つかった。県警によると、雑木林の枯れ草の上、白いタオルと透明なポリ袋に包まれていた。へその緒がついており、頭の骨が一部見えていた。児童虐待死を検証する厚生労働省の専門委によると、虐待死で最も多いのは生後0日。平成24年3月末までの8年9カ月に虐待死した495人のうち16%に当たる83人が、生まれた「その日」に死んでいた。
 慈恵病院の蓮田太二理事長(78)がドイツを手本にゆりかごの設置を決めたのも、熊本県で置き去り死が相次いだためだった。病院の前身は明治31年、カトリックの神父が建てたハンセン病の施療所。捨て子を育てる乳児院もあった。
 ゆりかごは平成19年5月から運用を始めた。「捨て子を助長する」といった批判の中、25年3月末までの5年11カ月で92人を受け入れた。一方で、病院は14年から相談活動を始め、18年11月からは24時間無料で電話を受けている。未婚、生活困窮、世間体、戸籍に入れたくない、不倫の子…。24年度は1千件に達し、累計は3800件を超えた。

特別養子縁組190組
 蓮田さんは「一方で、預けられた子供を育てたいと養子縁組を希望する相談が多いことに驚いた」と振り返る。昨年11月末までの7年間で1092件が寄せられ、190組の特別養子縁組が成立した。司法統計年報によると、18~24年の7年間の全国の成立件数は2273件。慈恵病院の数だけでこの1割近くになる。
 望まぬ妊娠などで生まれてくる新生児の特別養子縁組は「赤ちゃん縁組」と呼ばれる。愛知県の社会福祉士、矢満田(やまんた)篤二さん(79)が児童相談所に勤めていた昭和57年から始めた。政令市の名古屋市を除く県内の児童相談所で31年間に161組が成立し、「愛知方式」として知られる。
 厚労省は平成23年7月、「妊娠の悩み相談体制を充実させる」「匿名相談にも応じる」「養育困難の新生児は、妊娠中からの相談を含め、出産した病院から直接里親へ委託するという特別養子縁組を前提とした委託が有用」とする通知を全国の自治体へ出した。
 矢満田さんは「この通知を最も具現化しているのは慈恵病院の24時間相談であり、ゆりかごの匿名保護であり、その一歩手前で相談により保護した190人を養父母と結んだ赤ちゃん縁組ではないか」と指摘する。

あくまでシンボル
 全国で保護された新生児は児童相談所を経て9割近くが乳児院で育てられる。ゆりかごでも、23年9月末までに預けられた81人のうち乳児院が27人、里親委託が26人で、特別養子縁組は11人。蓮田さんは「乳児院では3歳になると児童養護施設へ移ることになる。子供にとって、お母さんと思っていた乳児院の職員との別れは非常に過酷な体験となる。精神的な虐待と言わざるを得ない」と話す。

 「ゆりかごへ預ける前に相談により一人でも多くの赤ちゃんが特別養子縁組を結び、実子として戸籍に入って、深く愛される家庭で育ってほしい。ゆりかごはあくまでシンボルであり、できるだけ赤ちゃんが入らないようにと願っている」

「明日ママ」視聴率安定も、日テレの姿勢には苦情殺到

夕刊フジ 2014年2月1日

芸能ニュース舞台裏
 “炎上”し続けているのは日テレのドラマ「明日、ママがいない」。視聴率は第1回が14%、第2回が13・5%、そして第3回が15%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)と安定していたが、局に寄せられる苦情や抗議は回を追うごとに増え、ついに内容変更を余儀なくされた。

テレビ誌記者の話。
 「毎週、2000件近くの意見がメールや電話で来ているようです。特に増えていたのが、病院や団体からの苦情にちゃんと対応していない、と日テレの姿勢を批判するもの。遅ればせながら日テレが内容を見直す方針に変更したのも、そんな世論を感じ取って決めたようです」