テレビ関係者が分析した「明日ママ視聴率ダウン」3つの理由

東スポWeb 2014年1月25日

 日テレ大誤算!! 22日に放送された芦田愛菜(9)主演の日本テレビ系連続ドラマ「明日、ママがいない」第2話の平均視聴率が初回放送の14・0%を下回る13・5%にとどまった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。一連の放送中止騒動が“追い風”となり、視聴率アップ間違いなしとみられていただけに、この結果は衝撃だ。スポンサー離れも判明するなど、まさに弱り目にたたり目。当初のシナリオも完全に狂ってしまった。
「誰もが視聴率アップを見込んでいただけに、発表された数字には衝撃が走りました。各方面から厳しい意見を頂いているだけに『これじゃ行くも地獄、戻るも地獄じゃないか』という声も聞かれます」
 そう証言するのは、日テレ関係者。児童養護施設を舞台にした同ドラマをめぐっては「赤ちゃんポスト」を設置する熊本市の慈恵病院や、全国約600の施設で作る全国児童養護施設協議会と全国里親会が、放送中止や改善を求め抗議中だ。
 22日放送の第2話では、一部の番組スポンサーが撤退。日テレは厳しい状況に追い込まれたが、それでも唯一の“希望の光”は視聴率だった。
「マスコミの過熱報道もあり、ドラマは一躍話題作に。『ちょっと見てみようかな』と考える視聴者は多いはずで、大幅アップは間違いないと、高をくくっていた」(同)
 だが、日テレお膝元の関東地区は初回放送を0・5ポイント下回る13・5%。同病院のある九州地方は北部では関心が高く10・1%から14・2%に上昇したが、これは“地の利”もあるだろう。
 関東ではなぜ下がったのか? テレビ関係者は3つの理由を挙げる。
「1つはどのドラマにも言えることだが、初回を見て『つまらない』『見ていられない』と判断されたこと。2つ目はネット上で一連の騒動が、日テレが確信犯的に仕掛けた“炎上商法”と捉えられている点。昨今の視聴者はバカじゃありませんよ。最後は単純。放送中止が噂され、エンディングまでたどり着けるかわからないドラマを誰が見るんですか」
 つまり、話題性で「見始めた人」よりも、1話を見て「視聴をやめた人」が多かったのだ。
 衝撃の視聴率ダウンで、当初のシナリオは完全に狂ってしまった。脚本監修に「家なき子」や「人間・失格」などの過激作で知られる野島伸司氏(50)を起用した時点で、ある程度のハレーションは織り込み済み。そのハレーションに視聴者が興味を示し、視聴率アップにつながる。さらに放送倫理・番組向上機構(BPO)に対しても「何とか乗り切れると考えていたフシがある」(同局関係者)。
 実際、22日に慈恵病院がBPOの放送人権委員会に審議の申し立てを行ったが、BPOの担当者は「被害者が不特定多数で漠然としている。これまでのケースを見ると、すべてが被害者本人の訴え。審議入りの要件を満たしているかどうかは微妙」としている。
 日テレとしては、開始当初は物議を醸し非難の声も出るが、ドラマが進むにつれてハートフルなストーリーとなり視聴者が増え、最終回には「考えさせられる、いいドラマだったね」と好評を博し、高視聴率も獲得――こんなシナリオを描いていたはず。だが、数字が下がる想定外の事態となった。これでは、さらなるスポンサー離れも起きかねない。
 第2話を見た前出・里親会の星野崇会長(68)は本紙の取材に「子供が里親になつかず、母親がヒステリーを起こすシーンは放送しないでほしかった。同様の壮絶な経験をしている里親は多く、ドラマを見たことでフラッシュバックする可能性がある」と危惧する一方で、「相変わらず子供たちを傷つけるセリフはあったが、心温まるシーンもあった」と一定の理解も示していたが…。
 スポンサーには降りられ、視聴率も下降――もはや日テレに選択肢はなさそうだ。

「明日ママ」キユーピー降板

nikkansports.com 2014年1月24日

 児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」(水曜午後10時)で、番組スポンサーのキユーピーが降板することが23日、分かった。同社は22日放送の第2話でもCM放送がなく、日刊スポーツの取材に「3話目以降の提供も取りやめます」と回答。水曜午後10時枠のスポンサー契約については「長期の契約なので今後、検討します」とした。
 第2話では、初回(15日放送)で提供社として表示された8社のうち、キユーピーのほか、エバラ食品工業とJX日鉱日石エネルギー(エネオス)もCM放送を見合わせ。エネオスも「提供の取りやめを検討しています」と降板が濃厚になっているほか、エバラも「ご意見を真摯(しんし)に受け止め、現在検討しております」と回答。花王、日清食品、富士重工業(スバル)、三菱地所、小林製薬の5社は提供クレジットの表示はなかったがCMは放送され、今後については「現時点で変更予定なし」「検討中」と対応が分かれている。
 この日は22日に放送された第2話の平均視聴率(ビデオリサーチ)が発表され、関東地区では初回から0・5ポイントダウンの13・5%、関西地区では1ポイント上昇の13・9%だった。

児童福祉の現場から追う! ポストに入れられた赤ちゃんの行方

All About 2014年1月24日

 日本テレビ系列で放送中の連続ドラマ「明日、ママがいない」に関連して、「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置している慈恵病院が申立てを行ったことが報道されました。いまの養子縁組と児童福祉の実情について解説します。

そもそも「赤ちゃんポスト」とは
 「赤ちゃんポスト」の試みは1999年にドイツで始まり、2006年の時点でドイツ国内で78ヵ所にも広がりました。同様の施設はヨーロッパ内にも徐々に広がりつつあります。しかし、設置後にドイツ国内での新生児遺棄や殺害などの事件がなくなったわけではなく、また、「赤ちゃんポスト」の法的な位置づけもあいまいなまま、留保されています。
 「赤ちゃんポスト」は、病院施設内の窓際に設置された保育器であるため、赤ちゃんをここに置いた親が保護責任者遺棄罪に問われないのかという点では、問題はクリアできているとのこと。
 一方、ポストに置かれた赤ちゃんは、その後どんな道をたどるのでしょうか。そしていま、現実に「育てられない」と手離される乳幼児たちはどれほどいるのでしょうか?

ポストに入れられた赤ちゃんはどこへ行くのか
 京都社会福祉士会所属の社会福祉士、佐竹紀美子さんは、赤ちゃんポストは「あってもいいもの」とおっしゃいます。長く児童福祉の現場に携わり、里子支援をしてきた経験から、「もっと養子縁組に目が向けられてほしい」との思いがあるそうです。
 保護者によって置き去りにされた赤ちゃん(2歳までの子ども)は、警察への通報などを通して、乳児院へ送致されます。これは一般に親が保育所に預けるような契約ではなく「措置」であり、行政処分なのだと、佐竹さんは強調します。「乳児院や児童養護施設に入所するということは、自らの意思による契約ではなく、法律上は少年院や刑務所に送致されるのと同じ扱い。この点は改善されるべきです」。
 佐竹さんは大阪市内のA養護施設でのカウンセラー業務を通して、里子支援活動にも携わって来られました。しかし、置き去りにされてしまった子どもの場合は非常に困難とのこと。ケースワーカーが長期に渡って身元を調査しますが、それでも何の手がかりもなく生年月日も名前もわからない場合、「法的には宙ぶらりん」で、そのままでは学校にも行けないので、家裁に行き、新しい「身元」を得なければなりません。2歳までは乳児院で育ち、その後は18歳の誕生日または高校卒業まで児童養護施設で生活を送ります。

「虐待」を受けて施設へやって来る子どもたち
 乳児院や養護施設などの、いわゆる「施設」で生活する子どもたちは、およそ3万8000人(平成15年 児童養護施設入所児童等調査結果の概要による)で、その入所理由の多くは父母の死亡などではなく、父母による養育放棄や放任、棄児、虐待などの広義の「虐待理由」によるものが増えています。
 本来、児童問題を扱う場所は福祉事務所と児童相談所(児相)、保健所ですが、児童虐待が社会問題化する中で、これらを連携させ、組織する試みが行われてきました。しかし、自治体本庁が音頭をとり、警察、学校、児童館、教育委員会や民生委員、児童委員などの有償ボランティアを組み込み、その制度は毎年のように変わっていきます。その背景には、虐待発見の取りこぼしが絶えないという反省があると、佐竹さんは言います。
 たとえば、虐待の疑いが濃厚な家庭を発見したとしても、児相はそこへ踏み込む権限を持ちません。児相が学校の先生に協力を仰いだり、近所の人の協力を得たりするなど、あの手この手のアプローチを取って、ようやくその家庭のドアを開けることができるといった状態です。最終的に警察が踏み込むこともありますが、それまでに踏まなければならない手続きが多く、現実にはドアを開けて家庭に踏み込む前に悲惨な事件が起きてしまう、「取りこぼし」がたくさん報道されています。
 通報や過去の事件が生かされない背景には、財政難からくる人員不足があります。どの児相も、ここ10年間で右肩上がりに増加する虐待の通報への対応できりきり舞い。過労で体を壊す職員も少なくありません。仕事量の多さが負担になり、結局システムが機能しなくなるのであれば、「人員配置をしない自治体には本気で児童問題と取り組むつもりがあるのか」といわれても仕方がありません。

「家庭内に踏み込まない」 日本の法律の限界
 根強い役所不信もありますが、それでも「おせっかいでも半歩身を乗り出して通報することができれば、防げる虐待がある」というのが児童虐待防止のスローガンです。怖くて注意できない、言えない、だから不干渉でいるということがむしろ虐待を地域で見逃すことになるのだと。
 地域の力が弱くなった現代、もし地域の力があれば「赤ちゃんポスト」は要らないのかもしれません。いつの時代も、産んだ子どもを育てられない状況にある女性は決して少なくありません。しかし、昔なら近所へ適当な里子に出すことで、地域で補完できていたものが、現代は地域とのつながりがないゆえに「乳児遺棄」になってしまうのだ、と佐竹さんは指摘します。
 日本の法律の根本として、性にともなう話はタブーなのだ、とも佐竹さんは言います。家庭に法律は不介入が日本の民法の特徴でもありますが、その点でもDV法は法律が家庭に踏み込んだ画期的なものでした。「性の奥深さ、あるいはおぞましさの上に立つ社会事象を法律に置き換えるのは困難なのです」。
 たとえば、内縁関係にある夫婦が、一方の連れ子を虐待して死に至らしめる事件を、何度も聞いたことがあるでしょう。なぜ、内縁の夫(妻)が実の子への虐待をするのを、実の親は止められないのか。あるいはなぜ、「育てられない」子どもを、それでも出産する女性たちがいるのか。その根本は、法秩序では救いきれない「性」にあるのだといいます。

養子縁組という選択
 佐竹さんは、代理母出産や極端な人工授精などの事例を聞くたびに、どうにかして養子縁組という選択肢を考えてくれないだろうかと思うそうです。担当する養護施設では、養子縁組はこの5~6年間でほんの2~3組成立したのみ。
 養子縁組は、せっかく登録してもなかなか紹介がなかったり、手続きが複雑だったりというイメージがあるために、日本では成立件数は非常に少ないといわれます。欧米では自分の子どもがいても、さらに積極的に養子を迎える家庭も多く、その点でも養子に対する考え方が違うようです。
 日本では、行政がもともと養子縁組のあっせんに消極的な姿勢を取っているとも感じられます。養子縁組を申し出た人には担当者がつき調査をしますが、この担当者が非常に少ないとのこと。いきおい、成立件数も少ないものとなります。
 佐竹さんは、児童福祉の現場から、「いま、育てることのできる子」を大事にしてほしいと訴えます。行政には、高齢者の認知症キャンペーンと同じ力を児童にも注いでくれれば、と。財源不足から人員が少ないために、子どもたちにしわ寄せが行く。それが児童福祉の現場なのです。
 ※この記事は2006年12月に執筆されたものを一部編集して掲載しています。
 【子育て事情ガイド:河崎 環】