これって虐待?と思ったら【前編】しつけと虐待はまったく別のもの

筆者:西澤 哲 2015年2月10日

子どもの虐待に関するニュースを見聞きすることが多いですが、加害者から「しつけの一環だった」という声が聞かれることがあります。しかし、本来、しつけと虐待はまったく違うものなのです。子どもの虐待事情に詳しい山梨県立大学教授の西澤哲先生にしつけと虐待の違い、そして子どもの虐待についてお話を伺いました。

しつけは「セルフコントロール力」を身に付けさせるもの
「しつけと虐待の境界線とは?」と聞かれることがあるのですが、両者はまったく別のものです。しつけとは、子どもにセルフコントロール力(自己調整力)を身に付けさせるために保護者が行うものです。たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんには、まだセルフコントロール力が備わっていないため、おなかが空いたり、眠れなかったりするなど「不快」な状態になると、保護者に泣いて知らせます。そこで、保護者がミルクをあげたり、あやしてあげたりすることで、赤ちゃんが「快」な状態になるように手助けしていくことが、しつけです。3歳位になると嫌なことや気に入らないことがあっても、保護者が言葉で説明すれば、だんだんと自分で気持ちを落ち着かせるなどのセルフコントロールができるようになっていきます。

虐待とは、子どもより保護者の欲求を優先する乱用的な関わり
一方、「虐待」という言葉は、本来は「濫(らん)用・乱用」を意味するabuseの訳語です。つまり、保護者が、子どもの存在あるいは、子どもとの関係を「利用」して、保護者の抱える心理・精神的問題を緩和・軽減することを意味しています。たとえば、「言っても聞かない時には、たたいてでも言うことを聞かせるのが親の務め」といって体罰をふるう保護者がいますが、実は、子どものためではなく、自分自身のために子どもをたたいている保護者が大半だと思います。たたいてでも子どもに言うことを聞かせることで、「自分は親として適切にやれているんだ」という安心感や有能感を得ているわけです。このような、子どもの存在や子どもとの関係を利用(乱用)して保護者が何かを得ている状態を、我が国では「虐待」と呼んでいます。
日本の児童虐待防止法では、子どもの虐待を下記の4つに大別しています。

(1)身体的虐待
子どもの身体に外傷を引き起こすように、保護者が意図的な暴力をふるう。殴る、蹴る、子どもを壁や床に投げつけるなどさまざま。
(2)ネグレクト
子どもの心身の健康な成長・発達にとって必要な身体的ケアや情緒的ケアを保護者が提供しないことを言う。
(3)性的虐待
子どもが親元や家族から逃げられないという状況を「利用」して、性的な行為を行い、子どもを完全に支配しようとする行為。
(4)心理的虐待
子どもの心に、いわゆるトラウマなどといった深刻なダメージを与えるような保護者の言動で、上記3つの虐待には分類されないものを言う。たとえば、「お前は欲しくて産んだ子じゃない」「お前さえいなければ、私はもっと幸せに生きていける」といった、子どもの存在価値を否定するような保護者の言動が挙げられる。

しつけと虐待は正反対のもの
子どもが言うことを聞かない時は、つい「厳しく叱る」「たたく」といった行為をしてしまうことがあるかもしれません。それは子どものためではなく、保護者が子どもを簡単に支配するためにしているだけなのです。いったんは、子どもの行動をコントロールできるかもしれません。しかし、恐怖を与えているだけにすぎず、保護者からの強制、つまり他律性でしか動いていないのです。これでは自分で考えて動けるような子どもには育ちません。最初はちょっと怒鳴られただけで怖かったのに、それが続くと、恐怖に慣れてしまい、だんだん怖くなくなります。次は、たたかれても、痛くなくなります。子どもに痛みや苦痛への慣れが生じていくため、同じ効果を得るためには、保護者は罰の頻度と強度を増やさなければならなくなります。そのことを考えると、本来めざす「しつけ」とは、逆の結果になっていると言えます。罰は、本来のしつけの目的とは正反対のものであることをはっきり言いたいと思います。

これって虐待?と思ったら【後編】子どもの立場に立って考えよう

筆者:西澤 哲 2015年2月24日

「イライラして、つい子どもを叱ってばかりいる」「やめようと思っているのに、子どもをたたいてしまった」……孤独な子育てをしていると、こんな風に追い詰められた気持ちになることはありませんか。子どもへの虐待を防ぐために保護者は何ができるか、前回に引き続き、子どもの虐待事情に詳しい、山梨県立大学教授の西澤哲先生にお話を伺いました。

虐待してしまう保護者の共通点
虐待してしまう保護者はモンスターのような存在ではないと思います。子どもが言うことをなかなか聞かないから、怒鳴ったりしてしまうことは誰にでもあると言えます。ただ、多くの保護者がそうした頻度が多くならないよう、手を上げることがないよう自分自身で制御していると思います。お休みの日は自分の好きなことをしたいけれど、子どもの好きな公園に行ったり、遊びに付き合ったりしてあげる保護者は多いでしょう。多くの保護者が自分の欲求よりも、子どもの欲求を優先してあげられるのは、自分自身の欲求が幼少期に満たされて育ってきたからと言えます。自分が子どもを持った時、今度は自分がそのニーズを満たす番になることができるのです。
自分の欲求を満たされていないまま保護者になった人たちは、大人になっても自分のニーズを満たすことに躍起になってしまうため、自分の欲求を邪魔する子どもの存在にいらだちを感じてしまうことがあるのです。その欲求不満から、力づくで、不適切な関わり、いわゆる虐待という行為をしてしまうのです。
特に重症な保護者ほど、自分自身が適切な養育を受けていないというケースが高いことが、私が行った過去の調査からもわかっています。ただ、こうした世代連鎖だけが虐待の原因ではなく、経済的に余裕がない、仕事と育児の両立が大変、といったいろいろなストレス要因が重なって、暴力や体罰をしてしまうこともあります。

子育てにおいて本当に大切なことを考えよう
上記に加えて、子育てに関する情報が氾濫(はんらん)していて、何が子育てにおいて大事かを見失ってしまっている保護者が多いのではないかなと思います。かつては、今のように受験や競争も激しくありませんでしたから、子育ても、健康に育てばよいというシンプルなものだったように思いますが、今はさまざまな子育て法や子育て観が発信されているため、どんな子育てを目指せばよいかわからなくなってしまうのです。
そのため、育児書に書いてあるとおり全部完璧にやろうとしゃかりきになってしまうことも多いようです。たとえば、1歳だけれどまだ言葉を話さない、3歳なのにおむつが外れない、年長だけどひらがなが書けない……といった細かいことばかりが気になってしまい、ほかと違うと、イライラしたり、不安になったり、疲れてはいないでしょうか。
また、食に関する問題から虐待をしてしまうケースがあります。特に幼児期には、子どもを健康に育てたいという愛情は非常によくわかるのですが、栄養をたくさん摂らせようと必要以上に躍起になってしまう保護者がよくいます。しかし、栄養バランスが多少くずれても、1日、1週間単位で見た時に必要カロリーが摂れればよいではありませんか。子どもの嫌いなピーマンやニンジンを、子どもをたたいたり、脅したりしてまで、必死になって食べさせなければいけないのか、よく考えてほしいですね。ピーマンだけにしかない特別な栄養もないですし、大人になったら自然と食べられるようになることが多いということを冷静に考えれば、かっとならずに済むと思うのです。食事の件はあくまで一例ですが、子育てにおいて何を大切にしたいかを考えてみてください。

子ども立場に立って自分の言動を振り返って
子どもを叱ってしまうのはしかたない時もあるでしょう。しかし、言われた子どもの立場に立ってご自身の言動を振り返ってほしいと思います。子どもたちが、保護者の行動や言葉をどう受け止めたかイメージしてください。「言い過ぎちゃったな」「ひどい言葉を言ってしまったな」と反省すると、次にかっと怒りそうになっても我慢できるようになってくるはずです。その際、子どもに悪かったと思えるのなら、すぐに謝りましょう。「ごめんね、怒鳴っちゃって」と。保護者が謝ってくれたと思えば、子どもはうれしいし、親子関係は修復していきます。
しかし、繰り返してしまう、気が付くとやってしまうのは、意識を越えて、自分の無意識のうちに虐待をしてしまっているからです。自分ではコントロールできない部分であることが多いので、専門家のサポートが必要だと考えられます。各市町村には、子ども虐待の問題に対応する窓口が設置されています。相談に行くことは、恥ずかしいことではありません。保護者として落第だと責められることもありません。お子さまのため、自分のためにも相談に行ってほしいと思います。
もし、周囲のかたや近所などで「虐待かな?」と思われる場面に出くわしたら、私はその保護者に声を掛けてほしいと思います。できればサポーティブに「大変ですね」と。子どもを怒鳴っている時は、保護者もきっと困っているのです。快感を覚えている人は決していません。けれど、それを自分ではセーブできないのです。育児の悩みを話せる相手がいれば、もしかしたら心が少し穏やかになるかもしれません。でも、あなたが受け止めきれなかったら、無理することなく、児童相談所などに連絡し、専門家の支援にゆだねましょう。
早期対応し、専門家の支援を受けることで、その子の負ってしまった傷を回復すること、そして虐待をしてしまった保護者の心もケアを受けることができるはずです。

認知症の謎が1つ解明!80歳を超えても認知症にかからない人の特徴とは?

Mocosuku Woman 2015年2月25日

厚生労働省が2014年7月31日に発表した調査によれば、2013年の日本人の平均寿命は、男性が初めて80歳を超えて80.21歳。女性は86.61歳で、1985年から連続世界一位を守っています。
でも、単に長生きすればいいというものではありません。認知症や寝たきりになってしまっては、人生を楽しむことができません。
最近、アメリカで認知症の謎を解く手がかりになるという一見、不思議な、それでいて希望の光となりそうな研究が発表されました。

新発見! 大脳皮質の厚さが、記憶力に関係していた!
研究者たちは、80歳を超えても50~60代の人たちと変わらない記憶力を持つ「スーパーエイジャー」と呼ばれる人たち12人に対して脳のMRIスキャンを含む様々なテストを行い、また5人の遺体の脳を解剖しました。その調査結果が、アメリカの神経学会誌JournalofNeurologに発表されました。
認識神経学とアルツハイマーセンター(CognitiveNeurologyandAlzheimer’sDiseaseCenter)で、この研究を統括するChangizGeul研究教授によれば、そもそもスーパーエイジャーの脳は、同年代の普通の人と比べると、構造自体や神経系統の結びつきに違いがあるというのです。一例をあげるなら、彼らの一部は、脳内で集中力をつかさどる前帯状皮質と呼ばれる部分が、より若い世代と比べても厚いそうです。つまり大脳皮質が厚いほど記憶力がよい可能性があるという新たな発見がなされたのです。

たんぱく質の「もつれ」が脳細胞を減らす
この研究には参加していないクリーブランドのBrainHealthandMemoryCenteratUHCaseMedicalCenterのAlLerner博士も、この説に賛成しています。彼によると、大脳皮質の衰退は認知症における貴重なマーカーなので、逆に言えば皮質が厚いほど認知症になる可能性が下がるかもしれないというのです。
またGeula研究教授によると、「細胞内で形成されて、細胞を死滅させるたんぱく質の『もつれ』が、同年代の人に比べるとスーパーエイジャーには少ない。この『もつれ』や大脳皮質の厚さと認知症の関係に関しては、より一層の研究が必要だろう」ということです。

特殊なニューロンを、3~5倍も多く持っていたことが判明!
人間、年をとると頑固になり、他人の意見をききいれなくなりがち。でもスーパーエイジャーたちは、社会との関係性が良好に保たれています。前述の研究結果によると、彼らはフォン・エコノモ・ニューロンという特殊なニューロンを、普通の高齢者や軽度の認知症患者と比べて3~5倍も多く持っているそうです。
スーパーエイジャーとは、一言でいえば、記憶力と協調性を兼ね備えた人たち、そういっても過言ではないでしょう。この分野は、さらなる研究成果が期待されています。

「ブラック自治体」50項目でチェック

qBiz 西日本新聞経済電子版 2015年2月25日

職務に見合わない低賃金で働いている非正規公務員の問題を広く考えてもらおうと、NPO法人「官製ワーキングプア研究会」(東京、白石孝理事長)が、各自治体の非正規公務員の労働実態を50項目でチェックする「『ブラック自治体』指標」を発表した。「○」「×」形式で30以上○がないと「ブラック自治体」と見なすべきだという。作成に当たった、地方自治総合研究所(東京)の上林陽治研究員は「各自治体で活用し、非正規公務員の労働環境の改善につなげてほしい」と呼び掛けている。
若者を大量に採用した後、過重労働で使い捨てにするいわゆる「ブラック企業」が社会問題となり、非正規公務員の労働環境が不十分な自治体も、改善が求められるようになった。
だが、労働契約法の改正で5年を超えた非正規労働者は期間の定めのない働き方に移行できるようになったが、公務員は適用除外で立場が弱いままだ。非正規公務員の待遇改善が進まなければ、行政のサービス低下を招きかねない。
指標は労働法制や地方公務員法などのルールに基づいて作成している。職員の「募集」「採用」「勤務条件」「休暇」「社会・労働保険」「雇い止め・再度任用」など八つに区分し、「本人の意に反する雇い止めが行われていない」「通勤費が支給されている」「有給休暇を取得できる」といった項目が並ぶ。
研究会は「指標は民間企業でも参考になる。労働組合や人事関連の部署で使ってもらえればいい」と話している。

非正規公務員の実態深刻
非正規公務員の生活実態は依然として深刻だ。
「現場の教員と同じ時間を働きながら、給与は教員の半分から3分の1の水準です」。福岡県内で学校図書館の司書として働くある非正規公務員はこう嘆く。
本の管理、読み聞かせ、辞書の引き方指導…。さまざまな幅広い仕事を一手に担い、経験がものをいう仕事にもかかわらず、契約は1年更新だ。「雇用がいつまで続くのか、いつも不安だ」と打ち明ける。
自治労の推計によると、非正規公務員は全国の自治体で約70万人に上り、公務員に占める比率は約33%に達するという。長崎県のある自治体は「非正規比率が7割を超えた」と明かす。自治体の財政難に伴う人件費削減と、増加する行政需要の矛盾を解消する存在として、教員、保育士、各種の相談員、給食調理員など幅広い分野で増えている。
平均年収は約200万円。交通費が支給されていなかったり、休暇制度が不十分だったりする自治体も少なくない。福岡県内では、4分の3に上る自治体で任用の更新回数に制限が設けられている。
非正規公務員の増加は行政の将来を危うくしている。「人がころころ入れ替わり、経験が必要な技術が伝承できていない」。九州のある自治体で埋蔵文化財の管理に携わる非正規の女性は、発掘後の土器などの復元、図面作りといった裏方を非正規公務員が支えているといい、「実態を住民に知ってほしい」と訴えている。

「体重が増える」場合もある!? 寒さによる“睡眠トラブル”に注意

ダイエットクラブ 2015年2月25日

2月も後半となり、春めいた暖かい日もあるが、夜や早朝はまだまだ寒い。この寒さが原因で、寝付けなかったり、朝起きれない人も少なくないだろう。

味の素 健康ケア事業本部「ヘルスケアレポート」より
味の素の健康ケア事業本部が、2月に公開したヘルスケアレポートによれば、冬から初春は、睡眠トラブルによって「気分が落ち込む」「人付き合いが減る」「睡眠時間が減る」「体重が増える」ことがあるらしい。
睡眠総合ケアクリニック代々木の理事である大川匡子医師は、同レポートの中で『冬は、寒さで日中カラダが活性化しないため、睡眠圧(睡眠欲求)が高まらない。また、冬は日照時間が短く、体内時計が崩れて不眠に陥りやすい。その結果として、睡眠リズムが崩れて、睡眠の質が悪くなる』とコメントしている。
また、大川医師は『週末に寝だめして、昼まで寝てしまう生活や、ストレス過多による緊張状態、残業や交代勤務などの不規則な生活などにより、徐々に夜間の睡眠に影響を与え、眠りづらいカラダになっていく』と話しており、現代人の生活スタイルは、不眠になりやすいと指摘する。
快眠のポイントは『就寝時の深部体温(カラダ中心の温度)をスムーズに低下させること』だと大川医師は述べており、さらに、レポートの中で「睡眠12箇条」についても触れている。
睡眠12箇条とは、厚生労働省が“健康づくりのための睡眠指針”として、2014年3月に制定したもの。この条文の中には「良い睡眠は、生活習慣病予防につながります」というものがある。
この条文に関して大川医師は『睡眠不足は糖尿病、肥満や高血圧の原因になるなど、睡眠不足による健康への悪影響は大きいものです』と話しており、良質な睡眠の大切さと、不眠が引き起こすトラブルの怖さを、レポートの中で伝えている。
なお、睡眠12箇条の内容や各条文の解説は、厚生労働省のサイトでチェックできる。