児相強制調査、迅速に…手続き簡素化

毎日新聞 2016年3月15日

児童虐待対策強化で、政府が今国会に提出する児童虐待防止法と児童福祉法の改正案の概要が分かった。虐待が疑われる家庭に児童相談所(児相)が強制立ち入り調査(臨検)する手続きを簡略化して迅速化を図るほか、児相に虐待に対応する若手職員や市町村の助言役となる教育指導担当職員の配置を義務づける。
臨検は、保護者が任意の立ち入り調査を拒否し、出頭要求にも応じない場合、児相が裁判所に虐待を疑う根拠や保護者との交渉記録などを提出し、裁判所が認めた場合に実施する。児相が面会を拒否され安否が確認できないまま子どもが死亡する例が相次いだことから、2008年に制度化されたが、14年度までの7年間で実施は8件だけだった。「臨検の手続きや要件が多く煩雑」との指摘があったことから、出頭要求手続きを臨検の要件から外す。
また、虐待通報から原則48時間以内に児相が実施する子どもの安全確認も改善を図る。児相は子どもの特定や現況把握のため乳幼児健診や通院の状況、保育所利用などを官民に照会するが、自治体以外からは個人情報保護を理由に回答を拒まれるケースもあったため、民間も情報を提供できることを明記する方針。
児童福祉法改正案には、児相に保健師ら専門職に加え、若手職員の助言役となるベテランの教育指導担当職員の配置義務も明記する。また、虐待などで親と暮らせない子供が、安定的な環境で成人後も生活できるよう、養子縁組の支援も児相の業務と位置づける。【野倉恵】

「養子縁組あっせん」問われるルール作り

日本テレビ系(NNN) 2016年3月14日

キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。14日のテーマは「養子縁組あっせん」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

親に恵まれない子ども
いま、日本には親がいなかったり、親元で暮らせないなどの子どもが約4万6000人いる。こうした子どものうち、8割以上の子どもが乳児院や児童養護施設などの「施設」で暮らしている。施設で暮らす子どもは、イギリスやアメリカでは3割以下、オーストラリアでは1割以下となっていて「施設から家庭へ」という動きが主流になっている。
国連も2009年の指針で家庭環境の優先と施設の廃止に向けた努力を促した。厚生労働省も「今後15年間で家庭での養育を全体の3分の1まで増やしたい」と話しているが、日本では、里親や養子縁組の受け皿は、まだまだ不十分なのが現状だ。
そこで、このうち養子縁組の民間のあっせんについて与党が法案をまとめた。今月2日、あっせん団体へのヒアリングが行われ「養子の候補となる子どもや、養子縁組の希望者のデータベースを作って欲しい」など、様々な意見が出された。

不透明な実態も
厚労省によると去年の10月の時点で、日本に民間のあっせん団体は22ある。2012年度には116人の養子縁組が成立していて、家庭で子どもを育てることに一役買っている。一方で、一部で実費を上回るお金のやりとりがあったり、養子縁組に必要な生みの母の同意を出産前に取りつけるなど、不透明な実態も指摘されてきた。
そこで、今回の法案では、養子縁組のあっせん団体について、今の届け出制から許可制にしてルールや透明性を確保した上で、養子縁組を推進することを目指している。法案の中身を見てみると「届け出制から許可制に」「無許可あっせんに罰則を設ける」「営利目的のあっせんは行わない」などとなっている。自民・公明両党は、現在法案の作成を進めていて今の国会での提出を目指している。こうした法律が整備されれば規制と支援の両面が強化されることで、受け皿を増やすことができるかもしれない。

法律ができることは歓迎するが…
法案について、養子縁組に詳しい日本女子大学の林浩康教授は「法律ができることで養子縁組への国の予算を確保できるようになり、あっせん団体のスタッフの教育や、業務内容の質の向上が図れるだろう」と話している。養子縁組のあっせん団体「ベアホープ」の代表理事のロング松岡朋子さんは「法律ができることは歓迎するが、あくまでも最初の一歩。今、養子縁組の希望者は、ほとんどが不妊治療を経た夫婦。すでに実子を育てている夫婦にも広がるといい」と話している。

妊婦の支援も充実させるべき
養子縁組のあっせんは、児童相談所でもできるのだが、児童相談所は、増え続ける虐待の対応に追われて手いっぱいなのが現状だ。厚生労働省は養子縁組の相談や支援を新たに児童相談所の業務に位置づける児童福祉法の改正案を今の国会に提出することにしていて、体制の充実を図る考えだ。
もうひとつ大切なのは、生みの母親への支援だ。厚生労働省の調査によると、2014年度の中絶件数は18万1905件。生まれてくる赤ちゃんの約5分の1に当たる。日本女子大学の林浩康教授は「本来、生みの親が育てられる状況を整えることが大事。養子縁組のあっせんだけでなく、今後は妊婦の支援も充実させるべき」と話している。予期しない妊娠などで悩んでいる妊婦さんを妊娠中からサポートし、切れ目のない支援を行うことも重要だ。

施設から家庭へ
今日のポイントは「施設から家庭へ」。養子縁組あっせんのルール作りが進み、透明性が高まれば、養子縁組の受け皿も増えるはずだ。また、児童相談所に養子縁組専門の担当者を置いて民間のあっせん団体との連携を進めるなど、社会全体で子どもを守り育てる取り組みが必要なのではないだろうか。

スマホで抱えた「25年問題」 長時間使用やいじめ

教育新聞 2016年3月14日

(一社)日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)は3月12日、学生団体Re:inc(リンク)と、「スマートフォンセキュリティシンポジウム」を都内で共催した。基調講演では、藤川大祐千葉大学教育学部副学部長が、スマホの長時間使用やネットいじめなどを「平成25年問題」と総称し、その詳細を語った。
同副学部長はまず、子どものスマホと携帯電話の所有・利用状況を説明した。
内閣府調査によれば、27年度の高校生のスマホ所有・利用率は93.6%、携帯電話は3.9%だった。現在は圧倒的にスマホを使う人が多いが、23年度では、スマホ6.8%、携帯電話88.8%だった。24年度に逆転が起こり、25年度に大きく差が開いた。中学生の場合は、25年度にほぼ同率となり、26年度に逆転。現在はスマホが大きく上回る。
同副学部長は「現在、大学3年生以上の人が高校生のころと、今の高校生の実態の間にはギャップがあるはず」と述べ、ほんの数年で環境が一変したのを強調。「情報モラル教育の教材やコンテンツなど、2~3年前のものは内容が古くて使えない」と熱弁した。
同副学部長は「長時間使用」と「ネットいじめ」を、スマホの普及時期と絡めて「平成25年問題」と呼ぶ。
同調査によれば、27年度の青少年のインターネット利用時間は、平日1日あたり約142分。校種が上がるごとに利用時間が長くなっている。
また文科省の全国学力調査によると、スマホや携帯電話を長時間使っている人ほど成績が悪い傾向がある。「スマホのせいで成績が悪いとはいえないが、相関関係はある」と言及した。
ネットいじめについては、平成21年に「青少年インターネット環境整備法」が施行され、一時は改善の兆しが見えた。しかし、25年前後にスマホが普及し、再び増加している。25年に施行された「いじめ防止対策推進法」は、ネットいじめに関しても明記。児童生徒だけでなく、保護者に対しても啓発するよう記述されている。
同副学部長は「平成25年問題は、家庭・学校・地域が連携して指導しなければ改善が難しい」とした。
福祉犯罪の被害については、出会い系サイトに起因する事犯が大幅に減少。一方で、25年以降はID交換掲示板による被害が急増し、26年以降はそれと入れ替わるようにチャット型サイトでの被害が急増した。
同副学部長は「フィルタリングは効果があるが、利用率が少ない」と語る。携帯電話では高かったフィルタリング利用率が、スマホでは低下。ネットワーク型だけでなく、無線LANやアプリにも対応したフィルタリングを設定している人は非常に少ないという。「フィルタリングを蔑ろにするのは問題」と警鐘を鳴らした。
当日は他に、学生団体Re:incによる事例講演「スマートフォンセキュリティワークショップの紹介」、東京都立練馬高校の正木成昭情報科主幹教諭による教育現場講演などを実施。講演者全員によるパネルディスカッションも行われた。

考える力は7歳前後にぐんと伸びる!親は子どもの「考える」をサポートする話し方を

PHPファミリー 2016年3月14日

子どもの理解を深める
相手の立場に立ってみる、意図がわかる、容れ物が変わっても中身は同じ量だとわかる……。 7歳頃の子どもの中では、いろんな“わかる“が始まっています。
その「わかる」を使って考える練習をすると、より“わかる“が進み、考えるカも一緒に成長していきます。
そんなとき、ちょっと話してサポートしましょう。

ときには、子どもの感じていることを代弁する
ときには、子どものよい行動を言葉にする
ときには、問いかけて考えることをうながす
ときには、ヒントを出して気づきをうながす
ときには、参考として意見を伝える
ときには、相手の意図を解説する

こうした“ちょっと話す“を使うと、子どもはいろいろ考えます。
そして少しずつ考えるのが上手になり、身の回りの一つひとつのものへの理解が深まっていきます。こうした理解が、後の抽象的な思考の基礎となります。

考え方は性格をつくる
どんな考え方をするかによって、気持ちや行動は変化しますし、また考え方や行動は性格と大きな関係があるといわれています。
これからの子どもの人生に有益な考え方やものごとの受け止め方を身につけて欲しいですね。
例えば、遠くにいる友だちに手を振ったけれど無反応だったときに「気がつかなかったのかな」と考えるのと「わざと無視された」と考えるのでは、本人の辛さも、人との関わり方もずいぶん違ってきます。
また友だちが賞状をもらったときに「いいなあ、私も頑張ろう」と考えるのと「特別あつかいされてずるい」と考えるのでは、将来に差が出てくるだろうと思います。
このように、考え方は日常の生活のあらゆる場面に影響をおよぼします。ですから考え方を整えるのは子どもの人生にとって、非常に重要なことです。

子どもにとっていい考え方って何?
大きな可能性を秘めているこれからの子どもたちには、自分自身を大いに成長させるような考え方を身につけて欲しいと私は願います。
例えば「どうせ~だから」のような考え方が強いと、あきらめたり努力を放棄しがちになります。
一方で「続けていれば少しずつ上手になる」とか「できなかったことができたときってすごく嬉しい」というような考え方だと、くじけずに努力することができて成長を促進してくれます。
子どもたちは、自分の考え方をときどき口にします。
しかしそれらはどこかで聞いて覚えたり、格好いいなと思って使ったりしていることがほとんどで、その考え方がどんな風に自分の人生に影響を与えるかなんて、全く考えていません。
ですから、私たち大人は子どもに考えることをうながし、合理的な考え方を身につけるよう、サポートし勇気づける必要があります。

7歳のプライドを大切に
幼児期の後半では、やりたいことを妨害されたり、ぶたれて痛かったり、ひやかされてイヤなど、わりと単純なことに腹を立てますが、児童期になると、他の子と不当に比べられたとか、みんなの前でダメ出しされて恥をかいたなどに敏感になります。
つまり自尊心や名誉を重んじるようになるのです。
これは大人も同じですね。ですから幼児のときと違って、お互い失礼のない話し方で、ちょっと話します。
(PHP研究所『7歳からは、見つめて、待って、ちょっと話す』より)