明日、ママがいない 批評まとめ

 報道機関や著名人が、
 「ドラマは、認可外児童養護施設を舞台にしているが、現実の児童養護施設は…。」
 と言うような文章で記事をまとめていれば、ドラマの設定と現実の児童養護施設との区分けが出来ていたのではないでしょうか。
 認可外保育施設は、現実に存在しますが、認可外児童養護施設は、多分、存在しません。
 言葉の通り認可外ですので、法律にも定義されていません。つまり、フィクションの自由度があるのです。
 ただし、認可外児童養護施設と言えども、ドラマ中の施設長や児童福祉司の言動には触法行為がありますので、誰かが通報し、自治体職員からの事情聴取や自治体の審議会にかけられるなりのドラマ展開が必要でしょうね。

認可外児童養護施設を表す条文は下記の通りです。

児童福祉法
第五十九条  都道府県知事は、児童の福祉のため必要があると認めるときは、第三十六条から第四十四条までの各条に規定する業務を目的とする施設であつて第三十五条第三項の届出をしていないもの又は同条第四項の認可を受けていないもの(前条の規定により児童福祉施設の認可を取り消されたものを含む。)については、その施設の設置者若しくは管理者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員をして、その事務所若しくは施設に立ち入り、その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させなければならない。

第四十一条  児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。

第三十五条  国は、政令の定めるところにより、児童福祉施設(助産施設、母子生活支援施設及び保育所を除く。)を設置するものとする。
2  都道府県は、政令の定めるところにより、児童福祉施設を設置しなければならない。
3  市町村は、厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、児童福祉施設を設置することができる。
4  国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。
5  児童福祉施設には、児童福祉施設の職員の養成施設を附置することができる。
6  市町村は、児童福祉施設を廃止し、又は休止しようとするときは、その廃止又は休止の日の一月前までに、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
7  国、都道府県及び市町村以外の者は、児童福祉施設を廃止し、又は休止しようとするときは、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の承認を受けなければならない。

 つまり、無認可でも立入調査の権限を行使することは出来るよと言うことです。ドラマの設定では、この立入調査で不適切な事実が発覚し、業務停止を通知されるだろうと推測できます。

 もし、「明日、ママがいない」公式ホームページのイントロダクションが、次のような文章だったら、どうでしょう。

“今、君の隣にママはいますか?”

物語の舞台は、無認可の児童養護施設
親の愛から見離された少女たちが集まる

児童養護施設
そこは、家庭に事情がある子どもたちが暮らす場所
その数は全国で約600件、生活する児童の数は3万人を超えている
その中には、’虐待’を受けた子どもたちもいる
子どもたちを愛するのは  誰?

子どもを愛せていますか?
子どもの声を聞いていますか?

このドラマは「愛すること」「愛されること」は何かを、
子どもたちの目線で問いかける。

「私たち、誰も知らなかった。
昨日も今日もいたママが、明日にはいなくなるなんて…」

すべての母親に、これから母親になる全ての女性に届ける

21世紀で一番泣けるドラマ

 児童養護施設は、日本中の全ての子どもたちが、家庭の事情で入所するかも知れない場所です。「自分たちとは関係のない場所だ」と考えている方がいたら、認識を見直すべきでしょう。
 あなたは、今の幸せが、いつまでも続くと未来を予測することが出来ますか。
 もしかしたら、交通事故や災害で、命を落とすかも知れません。経済的に破綻するかも知れません。離婚の危機に見舞われるかも知れません。重い病気を患うかも知れません。虐待をするかも知れません。
 未来は、何が起こるか分かりません。何かの事情で、どうしても子育てが出来なくなったとき、あなたの代わりに子育てを担ってくれるのが児童養護施設です。
 児童養護施設は、あなたと全く関係のない福祉施設ではないのです。母子家庭や父子家庭の子どもたちもいます。経済的な理由、病気による入院、刑事事件等による収監、保護者の死亡や行方不明等の子どもたちもいます。DVや虐待が日常的に行われていた家庭の子どもたちもいます。あなたの未来に、このような事情が絶対起きることはないと確信できるでしょうか。
 児童養護施設は、子育てを家庭だけではなく、社会として担っていこうとの「社会的養護」の働きを実践している場所なのです。つまり、児童養護施設だけに子育てを任せるのではなく、社会として、子どもたちを愛していくことが大切な事なのです。