「明日ママ」影響懸念…慈恵病院、BPOに審議要求

スポニチ 2014年1月23日

 児童養護施設が舞台で、複数の団体などが放送中止や内容改善を要請している日本テレビドラマ「明日、ママがいない」(水曜後10・00)をめぐり、「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を設置する熊本市の慈恵病院は、「施設の子供や職員の人権を侵害している」として、放送倫理・番組向上機構(BPO)に審議を求めた。
 慈恵病院の蓮田健産婦人科部長は記者会見し「第1回放送後に、施設の子供がいじめられたとの報告を伝え聞き、緊急性が高いと判断した。BPOは速やかに結論を出してほしい」と述べた。
 病院側は主人公の設定のほか、施設が子供に泣く練習をさせる場面なども問題視。虐待を受けた子供が将来の放送で傷つく恐れがあるとして放送内容の変更を求めている。
 熊本市の幸山政史市長も22日の記者会見で言及。「過激な描写や演出、現実離れした表現が多く、児童養護施設への誤解を与えかねない内容だ。局は、施設当事者の声を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と述べ、改善を求めた。主人公のあだ名にも触れ「“ポスト”を持ち出す必要性は全くない。子供たちへの影響を懸念している」と述べた。
 日本テレビ総合広報部 慈恵病院がBPOに申立書を送付したと記者会見で説明されたとのことですが、当社としてコメントする段階ではないと考えております。

熊本市長:日テレに改善求める「過激演出、誤解与える」

毎日新聞 2014年01月22日

 熊本市の幸山政史市長は22日の記者会見で、日本テレビ系列で放映中の連続ドラマ「明日、ママがいない」について「過激な描写や演出、現実離れした表現が多く、児童養護施設への誤解を与えかねない内容だ。局は、施設当事者の声を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と述べ、改善を求めた。
 ドラマをめぐっては、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する慈恵病院(熊本市)が、児童養護施設関係者への人権侵害が含まれるとして放送中止を求めたほか、全国児童養護施設協議会も抗議している。(共同)

日テレ「明日、ママがいない」の炎上はやむなしと女性作家

NEWSポストセブン 2014年01月22日

 抗議をめぐって番組スポンサーの動向まで注目されるようになり、予断を許さない空気も出てきたドラマ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」(水曜日午後10時)。昨今、これほど賛否をめぐって議論を呼んでいるドラマは珍しいのではないでしょうか。
 慈恵病院(熊本市)は、「赤ちゃんポスト」に預けられた子を「ポスト」というあだ名で呼ぶなどといったドラマ設定に対し、人権侵害にあたると放送中止を申し入れました。この病院だけでなく、全国児童養護施設協議会も放送内容の修正を要請するなど、激しい批判が集まっています。
 一方で、児童養護施設出身者による「感謝してる」といった声も。社会全体で考える良い機会、フィクションだとわかっているから問題ない、芦田愛菜の演技力はすごい、といった絶賛も目立ちます。ネット上を見回すとたしかに賛否入り乱れています。
「こうした題材のドラマを作ってはいけないというわけではなくて、その描き方に物議を醸し出す問題があるのでは」と、多くの視聴者は気付いているようです。
 一言でいえば、「話題になることを意識した刺激的手法が、子どもを題材にしてどこまで許されるのか」という問題ではないでしょうか。
 たしかに子ども同士の陰湿ないじめは現実の中に存在する。児童施設に子どもを預けた親の中には、泣く泣く手放す選択をせざるをえなかったケースもあれば、生まれてしまった子を捨てたケースもあるでしょう。現実の事情は多様でさまざま。
 ただし、このドラマの脚本と演出は、「ポスト」といった直接的なあだ名で子ども同士を罵りあわせたり、施設の管理者が子どもたちを人間扱いせず「お前たちはペットと一緒だ」と言い、恫喝・体罰とともに「もらわれたいなら媚びろ」と指導するなど、いわば「残酷なことがすべて重なりあい凝縮して同時に起こる」、かけ算的ドラマ作りになっています。
 こうした脚本と演出の仕方は、注目されることを意図した刺激路線と言われても、仕方ないでしょう。
「インパクトばかり重視」「視聴率・話題狙い」「炎上商法」といった指摘がネット上に見られるのは、そうしたドラマ作りに対する「うさんくささ」を、嗅覚で多くの人が感じとったからではないでしょうか。
 とりわけ今回の登場人物は、自分の人生を選択できる大人ではなく、さまざまな事情で否応なく施設に預けられた子どもたち。そうした子どもを、敢えて過酷で刺激的な設定の中に置いて、極限状況に直面させているのだとしたら、このドラマ作りの目的は何なのか?
 奇しくも、「日テレいつでもどこでもキャンペーン」がスタートしたところ。このキャンペーンは、日テレで放送された人気番組を各話放送終了後、Webで7日間無料配信するというもの。そのタイミングに「明日、ママがいない」の幕開きをもってきて、大騒動になっているという現実。
 脚本家はコメントを出しましたが、このドラマには脚本の監修者がいるそうです。数々の話題作・問題作を手掛けてきたベテラン、野島伸司氏。監修という立場から大局的な見解を持っているはず。今回のドラマの目的やねらい、現在の騒動について、監修者の考えを率直に聞きたい。
 日テレの広報は「ドラマは子どもたちの心根の純粋さや強さ、たくましさを全面に表し、子どもたちの視点から『愛情とは何か』を描くという趣旨のもと、子どもたちを愛する方々の思いも真摯に描いていきたい」と、放送を続ける宣言をしました。
 今、異議を申し立てている人たちが、今後「なるほど子どもたちは純粋で強い」「愛情とは何かがわかった」と言える展開になっていくのかどうか。全国の児童養護施設を運営している人たちや、そこで生活している子どもたちが納得してこのドラマを見ていくのかどうか。今後の展開に注目したいと思います。

施設から家庭的養育に 栃木県内ファミリーホーム開設相次ぐ

下野新聞 2014年1月23日

 さまざまな事情で家庭で暮らせない子たちを養育する社会的養護の一つ「ファミリーホーム」が1月、県内で相次いで2カ所開設された。県内のホーム開設は2010年以来、計3カ所。社会的養護は大人数の施設中心から、ファミリーホームや里親家庭など少人数の家庭的環境での養育へと移行しており、流れは県内でも加速しそうだ。
 「今まで(の里親家庭)と変わらない。建物が新しくなったから良かった」
 宇都宮市内に開設されたファミリーホーム「はなの家」で暮らす少年(15)は夕食の食卓で笑顔をみせた。
 ホーム長は児童養護施設の勤務経験が長く、里親でもある石川浩子さん(53)。少年は石川さんの自宅から、新たに民家をリフォームしたホームへ移った。
 足利市内に開設した「丘の家」は新築だが、建物は民家同然。小学5年から高校2年までの6人が児童養護施設などから引っ越した。
 ファミリーホームは08年に社会的養護として制度化された。当初、里親が5、6人の子どもとともに起居する個人事業者の形態だった。だが国は普及させるため12年、法人が事業者となりホーム長に児童養護施設などの勤務経験者も積極的に認める方針を打ち出した。
 新たな2ホームはいずれも法人が事業者だ。
 社会的養護のもとで暮らす県内の子どもは13年12月現在、664人。このうち里親家庭とファミリーホームで暮らすのは114人で17・2%。国は里親家庭とファミリーホームで暮らす子の割合を社会的養護全体の3分の1に増やす方針で、県こども政策課も「より家庭的な環境で個人に応じたケアができる」として今後も積極的に導入する方針だ。