国会議員をはじめ市区町村の議員で、児童養護施設や里親の実情を把握している人は、一握りです。
 「票に結びつかない施策」のために、汗を流そうという熱血漢が、残念なことに少ないのが現実です。
 児童施策と言えば、少子化対策の保育事業の充実ですが、こちらは、票に結びつきます。
 しかし、児童養護施設や里親は、利用児童数が限られており、利用している保護者、つまり、有権者が少ないのが実情です。
 そんな中、関係者は、心血注いで改善を訴えていることも、紛れもない事実です。
 その甲斐あって、少しずつ、児童福祉施策も改善されてきています。その改善の動きが緩やかすぎるのが問題なのです。
 改善が必要なのに改善されていないと言うことは、そのひずみを誰かが負っています。
 それは、誰なのか。利用している子ども達は、勿論のこと、子ども達を支えている支援者達です。
 心労負担であれば、子ども達のことを想い耐えることも出来るかも知れませんが、経済的負担は、別問題です。
 里親は、「お金を儲けたい」と思って子ども達の支援をしているわけではありません。
 しかし、経済的な赤字負担を担い続ければ、いつか破綻することは目に見えています。
 特に里親の現実は、自分の報酬を削ったり、無報酬だったりしながら運営されています。
 ところが、ほんの一部の不適切な対応をした里親が報道されることで、里親全体が、(-)イメージになってしまうことは実に残念なことです。
 殆どの里親は、自分の身を削って子供達の為に日夜奮闘されています。
 児童福祉施策が変化するためには、どうしても国会議員や市区町村の議員が関わらなくては、不可能です。
 もっとも分かりやすい行動は、議員への陳情です。現場を見学して貰うことも重要です。百聞は一見にしかずですね。
 票に結びつかない陳情は無視するような議員であれば、次回の選挙では票を投じるに値しないと判断するくらいの勢いがあっても良いと思います。
 聞くだけ聞いてアクションを全く起こさない議員も然りです。
 「旅行に連れて行ってあげたいのに」「部活の遠征費を出してあげたいのに」「お習いごとに通わせたいのに」などなど、「お金があれば」と言うシーンに出くわします。
 里親は、子育てに対する葛藤と共に経済的葛藤と日々、悩み続けています。

 児童自立支援としての就労支援、大学通学等の学業支援、総じてアフターケア支援についても不十分です。施策としては充実してきていますが、そこに経済的支援が不足しています。
 国の施策は、最低の基準を下回っていれば法律違反となりますので改善を急ぎますが、法律上の最低をクリアしていれば、緩やかな改善となります。
 それは、殆どの場合、改善=お金が掛かると言うことに他なりません。
 能力があっても大学等に通学することは経済的に困難だと言う事例は、経済的に苦しい家庭であれば避けることの出来ない現実です。
 そのような現実が存在する中で、児童養護施設児童や里子たちへの補助を充実させることは、「如何なものか」と言う理屈もあるでしょう。
 高校を卒業して、ひとり立ちせざるを得ない家庭の子ども達がいることも現実です。しかし、実家から、就労先や進学先に通う子ども達が大勢存在することも現実です。
 最低をクリアしていれば、それで良いのか。それを判断するのは、投票権を持っている国民であることを私たちは忘れてはいけないでしょう。

 児童養護施設を小規模グループ化し、その小規模グループを地域に出していきましょうとの施策がありますが、実は、この施策は中途半端なのです。
 小規模グループを地域で運営していくためには、殆どの場合、賃貸契約が必要になりますが、厚生労働省は、不動産関連業界への協力要請をしていないため、各児童養護施設が自力で賃貸物件を確保しなければいけません。
 6名の子ども達が生活できる賃貸物件は、最低4LDKの間取りが必要ですが、地域・入居時期・賃貸料等の条件をクリアする物件は、そう多くはありません。
 それを「民間の力で確保しなさい」と言う状況は、小規模グループの地域出しについての大きなハードルと言わざるを得ません。

 ファミリーホームの場合、賃貸費の補助金すら、まだ、ファジィな状態なので、ましてや、持ち家(住宅ローン)の場合、補助金は検討すらされていないと認識しています。