社会福祉法人 児童福祉 児童養護施設

児童養護施設関連制度

ページの目次

1 児童家庭支援センター

児童福祉法
第44条の2
 児童家庭支援センターは、地域の児童の福祉に関する各般の問題につき、児童、母子家庭その他の家庭、地域住民その他からの相談に応じ、必要な助言を行うとともに、第二十六条第一項第二号及び第二十七条第一項第二号の規定による指導を行い、あわせて児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整その他厚生労働省令の定める援助を総合的に行うことを目的とする施設とする。
② 児童家庭支援センターは、厚生労働省令の定める児童福祉施設に附置するものとする。
③ 児童家庭支援センターの職員は、その職務を遂行するに当たっては、個人の身上に関する秘密を守らなければならない。

 児童養護施設運営の単体事業では、限られた空間での限られた利用者(児童)へのサービスと表現せざるを得ません。ただ、ボランティア活動が活発で、地域に対しては、開かれていますが、「ボランティア活動を受け入れる」「寄附金を頂く」等、受け身の状態です。これは、地域への福祉サービスと言う観点からは、地域への貢献不足と言えます。
 今後の児童福祉展開を考える上で、子育て支援サービスとしての窓口を設置し、門戸を開き、児童福祉サービスを展開していく、それが、被虐待児に対する対策や防止、DVに対する対策や防止へと展開していくことでしょう。
1.児童養護施設の限界
 児童養護施設の直接処遇業務を大きく4つに分けると
第一時的業務…児童処遇(24時間子どもたちの安全を守り子育てを進める)
第二次的業務…記録・ケース会議等(専門職としての業務)
第三次的業務…保護者や児相、学校等との連絡調整(関係機関との連携)
第四次的業務…アフターケア、地域への啓発
 となりますが、現実は、第一時的業務から第三次的業務で精一杯の状況です。地域への子育て支援サービスを展開していくには、人事システム、業務システムの改善が必要ですが、現状でも、法定配置職員を上回る雇用体制で業務を進めています。
 つまり、児童福祉法の職員配置数と労働基準法の労働時間への法律改正が連動していないために、それが運営に支障を来していると言えるでしょう。現状制度内での児童養護施設単体事業では、限界があり、なかなか、地域への子育て支援サービスへと展開していくことは困難です。
2.児童福祉事業のセンター的機能
 児童養護施設単体事業では、困難なことでも、そこにセンター的機能を担う事業が併設されれば、相互利用と協調性で、地域への子育て支援サービスの貢献が充実したものへと展開されていきます。
 そのセンター的機能を担うのが、児童家庭支援センターになります。最も重要なことは、人材であり、児童家庭支援センターにはソーシャルワーカーが配置され、様々なケアマネジメントに対応していく可能性が秘められています。このソーシャルワーカーの存在が、今後の児童福祉サービスの展開に必要不可欠と考えられます。
 特に関係機関との連携及び連絡調整において、そのセンター的機能を担う児童家庭支援センターの併設は、子育て支援サービス事業の一角をなす事業になると考えられます。
3.主な業務内容
児童家庭支援センターの主な業務内容は以下の通りです。
①相談支援事業
・受理相談(来園、電話相談、手紙、電子メール相談等)
・巡回、訪問相談
・カウンセリング
・児童相談所からの委託による受理相談
 中核をなす業務であり、最も地域住民に近い位置での業務になります。常勤職員1名、非常勤職員1名、非常勤心理療法士1名の3名で相談業務に当たっていきますが、将来的には、地域の母親経験者のボランティア活用も検討していく柔軟性を持っています。
 児童相談所の補完的役割も大きな業務の一つです。児童相談所とは常に連携をとりながらスピード感のある相談業務受付処理ができるようにします。
②一時保護受託調整
 児童相談所より児童養護施設へ一時保護の委託がある場合、児童養護施設の空き状況を確認し児童養護施設のケースワーク担当者と共に受託調整します。
③子育て短期支援事業の受託調整
 具体的には、ショートスティ・トワイライトスティですが、児童相談所を通して依頼があった場合にサービスを提供します。実際の受入れ部署は児童養護施設ですが児童相談所と児童養護施設の仲介的役割を担います。また、児童相談所と連携をとりながらファミリーケースワークへの展開を図ります。
④親子生活訓練室を利用してのファミリーケースワーク
 児童養護施設児童と保護者との親子関係が不調で、一時帰宅等を拒む状態や被虐待ケースで親子関係修復を試みる過程において一時帰宅の段階に入る前の状態等において、親子を宿泊させ、その時の情態観察を心理療法士が行ってカウンセリングに結びつけるなど、ワーカーも一緒に生活し親子関係修復の試みを行います。(児童養護施設家庭支援専門相談員との連携)
⑤地域啓発事業
・地域交流スペースの運営管理
・子育てに関する講演会の実施
・パンフレット配布等啓発、広報
 地域交流スペースを活用することによって、地域住民が気軽に足を運べる開放的な空間作りを心がけます。それが児童家庭支援センターの認知度へと繋がり、気軽に相談できる場所として定着できるようにします。
 パンフレットを作成し、公共施設の窓口に置かせていただいたり、子育てに関する講演会等を企画運営したり等、啓発、広報活動にも力を入れます。
⑥関係機関との連携及び連絡調整
 ソーシャルワーカーがケアマネジメントを進める上で、重要な位置を占めるのが関係機関との連携です。児童相談所、市町村、福祉事務所、児童福祉施設、児童委員、母子自立支援員、母子福祉団体、公共職業安定所、婦人相談員、保健所、市町村保健センター、学校等関係機関との連絡調整を通し、家庭に係る状況把握や支援計画の作成、子ども又はその保護者に対する必要な援助の検討を行います。
 その下地として各所の連絡先、主な担当者のリスト作成。各所のパンフレット等の収集、各所の事業内容の把握、連絡調整会議又はケース検討会等、実施に向けてのシステム構築などを進めていきます。

 児童養護施設で働くあなたへ、「井の中の蛙大海を知らず」では、あなたの成長はストップします。現在の、児童福祉制度の中には、充実した制度もあり、それを活用できるかどうかは、あなた次第なのです。あなたが経営や運営は自分にとって関係ないと思っていたら、児童福祉の発展は停滞してしまいます。積極的に制度を学び、活用できる、あるいは実現できると思ったら、企画書を作成し運営者へ提言していきましょう。

2 児童家庭支援センター職員資質

 児童家庭支援センターの職員は、ケースワークやグループワークと言った範囲に留まらずコミュニティワークも含めてソーシャルワーカーとしての資質が求められます。
1.地域の子どもの福祉に関する各般の問題に関する相談、必要な助言子育て支援に関する相談業務であり、児童家庭支援センターの役割の中で最も重要な位置にあります。
①関連法令の熟知
・「児童福祉法」「少年法」「生活保護法」「児童手当に関する法律」等
②児童の権利擁護に関する憲章他の厳守
・「児童憲章」「児童権利宣言」「児童の権利に関する条約」
③相談受付時の対応
・カウンセリング技法の学習、可能であれば習得
・自己確立と人格の修練(自分を磨く)
・人格障害や精神疾患への理解(クライアントを選択できない)
④その他必要と考えられる知識
・「保育原理」「児童心理」「社会福祉援助技術」他
2.児童福祉法第26条第1項第2号、第27条第1項第2号の規定による指導
①児童又はその保護者への指導を児童相談所長より委託される。
②児童又はその保護者への指導を都道府県より委託される。
委託を受けた場合、適切に対応できるよう、指導方法の確立、受付書・報告書等記録整備ノウハウの確立を成す必要があります。
3.訪問等の方法による要保護児童及び家庭に係る状況把握
①礼儀作法の修練と信頼に値する対応技術の訓練
②保護者による児童虐待等への対応。発見した場合、速やかに児童相談所又は警察へ通報できるシステム構築。
4.関係機関との連絡調整
 児童相談所、市町村、福祉事務所、児童福祉施設、児童委員、母子自立支援員、母子福祉団体、公共職業安定所、婦人相談員、保健所、市町村保健センター、学校等関係機関との連絡調整を図るために、各所の連絡先、主な担当者のリスト作成。連絡調整会議又はケース検討会等、実施に向けてのシステム構築。
5.要保護児童及び家庭に係る支援計画の作成
 「親子関係修復」「育児技術の助言」「関連機関の紹介」「関連制度の紹介」「カウンセリング又は心理療法の実施」「家庭訪問」等々を適切に組み合わせ、支援計画を作成します。その際、クライアントに支援計画を十分に説明し理解を求め、共同作業であることを認識してもらうことが重要です。
6.その他子ども又はその保護者等に対する必要な援助
 現在の状況から脱却したい思いがあり相談してくるケースが殆どであると予測できますが、どんな些細な取り組みでも、そのクライアントの思いが僅かでも改善できれば、結果論として良しとなるでしょう。従って、援助技術は規定の枠に囚われずに柔軟性を持って必要な支援を模索していく努力が必要です。
7.総じて
 児童家庭支援センターの職員は、豊富な情報量、俊敏な判断能力、適切な問題処理能力、対人協調性、書類作成能力等々を総合的にコントロール出来ることが求められます。但し、単独での行動や判断は、誤解・曲解等に対する自己修復が働きにくく、児童家庭支援センターでは、訪問面接相談等への複数行動、相談受付後、検討会議を経て対応策を決定する等、常に主観ではなく客観性を持って業務を進めていきます。また、児童虐待・DV等を発見した場合、速やかに関係機関へ通報する決断力も求められます。
8.児童家庭支援センターへの期待
 児童家庭支援センターを運営するにあたって、最も重要で必要不可欠なのは、優秀な人材であると認識しています。裏返せば、優秀な人材がいれば児童家庭支援センターは素晴らしい機能を発揮できると言えます。

3 地域交流スペース

 地域交流スペースが活用されれば、そこでの地域住民の交流や、ボランティア活動を通して児童への理解が深まり、子育て支援に対する市民相互扶助の精神が啓発され、それは、地域全体の活性化に繋がり、児童福祉の充実した魅力あるまちづくりが推進されるなどの効果があります。
 ホールや会議室は、原則として予約制とし公平性を持って管理します。掃除等の維持管理については、ボランティア活動の一環として依頼したり等、単にお貸しするだけではなく地域資源の一部としての活用を啓発します。但し、児童養護施設の重要イベントでの使用に関しては、事前にお知らせし使用への理解を求めます。
1.目的
①ボランティア活動の拠点として活用
②ホールを地域住民の軽スポーツやイベント会場として活用
③会議室を地域住民会合の場として活用
④児童養護施設児童と地域児童の雨天時遊び場として活用
⑤児童養護施設のイベント会場として活用
⑥災害時緊急避難場所として活用
2.ホールを地域住民の軽スポーツやイベント会場として活用
 地域住民が気軽に利用できる開放的な福祉施設として認知されるためには、日常的に利用できるサービスが必要です。平日にホールを開放し、バトミントンや卓球等、軽スポーツを楽しむことが出来れば、地域住民も積極的に利用することが出来ます。
 また、ミニステージ等を使い、ミニコンサート等の企画にも展開できます。地域交流スペースと言うハードを通して、様々な交流イベントへの展開が見込まれます。
3.会議室を地域住民会合の場として活用
 地域社会には、様々な会合が開かれています。それらの会合の会場として利用していただければ、自然に地域住民の方が福祉施設に入ってくることが出来ます。それは、地域住民へのサービスと共に、社会福祉の啓発にも繋がっていきます。
4.児童養護施設児童と地域児童の雨天時遊び場として活用
 晴天時に比べると雨天時は、子どもたちの遊び場が、明らかに少ない現状と、犯罪に巻き込まれにくい安全な遊び場として、地域交流スペースは、十分に貢献できます。現在でも児童養護施設児童の学校友人が晴天時は勿論のこと、雨天時も遊びに誘いに来て、児童養護施設内で遊んでいる姿は、日常の出来事です。
5.児童養護施設のイベント会場として活用
 児童養護施設では、年間を通して様々なイベントがあります。4月は進級・入学のお祝い、12月はクリスマス会、3月は卒業のお祝い会、その他にも、日本古来からの節句行事等があります。また、研修会、施設職員研究会、児相との協議会、小学校・中学校との懇談会等も大切な場であり、それらの会場として活用できます。
6.災害時緊急避難場所として活用
 1995年1月の阪神・淡路大震災の災害緊急避難場所として、多くの学校が活用されましたが、小規模スペースの公民館や地区集会所での避難生活の方が、少しでもストレスの少ない避難生活が出来ていたことはご承知の通りです。阪神・淡路大震災の教訓を生かす意味でも、地域交流スペースの災害緊急避難場所としての活用は不可欠です。自治区と協議し調整を図ります。
7.事業展開の可能性
 子育て支援職員を配置することが可能であれば、地域の小学1年生から小学4年生までの学童保育を展開することができます。これは、放課後に児童が安心して過ごせる場所の確保に対して有効な効果が十分に期待できます。
8.事業の複合化
 児童家庭支援センター、子育て支援短期利用事業、親子生活訓練室等の事業を複合的に活用し、その相互作用によって、より充実した地域住民への子育て支援事業の展開が期待できます。
9.地域交流スペースの機能
①ホール…地域住民の交流と文化活動振興、地域レベルの発表会や催し物等の場を提供
②会議室…コミュニティ活動のための集会スペースの提供
③ボランティア室…ボランティア活動の拠点スペースとしての提供
④倉庫…地域住民からの寄贈物品保管、椅子・テーブル保管
⑤トイレ…身障者トイレの完備
おわりに
 児童福祉施設の限られた空間の中だけで子育てを終結するのではなく、地域住民の皆さんと共に、子育て支援を進めていく。そのことを通して、地域住民に少しでもお役に立てるよう地域交流スペースを活用していくことが望まれます。

4 低年齢児受け入れ

児童福祉法
第4条
 この法律で、児童とは、満18歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
1. 乳児 満1歳に満たない者
2. 幼児 満1歳から、小学校就学の始期に達するまでのもの
3. 少年 小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの者
第41条
 児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。以下この条において同じ。)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする。

 児童養護施設には、原則として満1歳以上の子どもたちが入所してきますが、1歳から2歳児は、低年齢児であり、特別の養育が必要です。
1.養育内容
・幼児の健全な発育を促進し、その人格の形成を促します。
・被虐待児などに対し、人の愛情を豊かに与える取り組みをします。
・精神発達の観察及び支援毎日定時に行う食事授乳おむつ交換入浴外気浴及び安静並びに定期に行う身体測定のほか、健康診断及び必要に応じ行う伝染病等の予防処置を行います。
・幼児の保護者及び必要に応じ児童福祉司又は児童委員と常に密接な連絡をとり、幼児の養育につき、協力を求めていきます。
2.勤務態勢
 職員数は、児童対職員比率は2:1以上になる。職員の雇用に関して一日8時間週40時間を厳守し、勤務ローテーション表を組み上げた場合、これでも、深夜は、夜勤1名体制であり、朝・夜に関しても、2~3名の職員配置とならざるを得ません。但し、児童の状況により、臨機応変、勤務ローテーションを再調整し、必要な時間に必要な人数が配置できるよう最大限の努力をします。
3.調理について
 幼児期の食事は、年齢や発達段階の状況によって、咀嚼能力も変わってくるため、各々の個性に応じた食事の提供が求められます。また、栄養状態、疾病の有無、生活状況に応じた食事提供の調整も必要です。調理は、衛生管理の行き届いた調理室で調理員が行い、低年齢児受入の部署に持って行き、配膳するシステムが一般的です。

5 グループホーム型

 児童福祉施設におけるグループホーム型事業は2種類あります。
①児童養護施設分園型自活訓練事業
 学校卒業等にともない退所が予定されている児童を1施設あたり6人程度、おおむね1年程度の期間で適切な家庭生活訓練、社会適応訓練を行い、退所後の社会的自立を図ることが目的となっています。
実施場所は施設の外に、住所やアパート等、通常の生活に必要な設備を持った場所を用意する等して準備することになります。
②地域小規模児童養護施設
 主として長期にわたり家庭復帰が見込めない児童を対象に、本体児童養護施設と一体的に運営するものとして、地域の住宅地などに新たな小規模な施設(定員6名)を設置し、近隣住民との適切な関係を保持しつつ、家庭的な環境の中で養護を実施することにより、入所児童の社会的自立を促進するものです。
*2つの事業共に本体の児童養護施設機能を補完することが目的となっています。

「分園型自活訓練事業」
1 趣旨
 児童養護施設分園型自活訓練事業は、施設入所児童が施設を退所する前の一定期間に地域の中で生活体験を行い、併せて必要な訓練を行うことにより、社会人として必要な知識・能力を高め、もって社会的自立の促進を図るものである。
2 対象児童
 施設長は、対象児童の選定に当たっては、一年以内に社会的自立を予定している児童を優先すること。
3 訓練期間
 訓練期間は、就職前等概ね一年間とし、その開始時期は、高校三年進級時等とすること。
4 事業の実施
①事業は、緊急時において適切な対応がとれる場所で実施するものとし、児童の居室は、男女を別にし、一室の定員は概ね二人とすること。
また、必要に応じて個室を設けること。
②事業担当責任者には、原則として当該施設の児童指導員等直接処遇職員の内から適当と判断される職員をあてること。
また、事業担当責任者を中心とした施設職員による指導訓練チームを編成するなど施設が一体となった体制により実施すること。
③事業担当責任者は、次の書類の作成及び管理を行い、効果的な指導訓練が行われるよう努めること。
ア 年間指導訓練計画
イ 個別指導訓練計画
ウ 入所児童の生活記録
エ その他、当該事業に必要な書類
5 留意事項
①対象児童及びその保護者等に対し、事前にこの事業の趣旨及び内容を十分に説明すること等により、事業の円滑な実施が確保されるよう留意すること。
②事業の実施に当たっては、事故防止、健康管理、衛生管理等について十分配慮すること。
③指導訓練に当たっては、個性を尊重し、施設退所後の社会的自立への意識を高め、人間関係の形成が円滑に行われるよう努めるとともに、地域社会や関係機関との連絡調整等に十分配慮すること。
6 経費
 本事業の実施に要する経費は、別に定めるところにより支弁を行うこととしているが、支弁の対象は年度内における各月初日入所児童の平均が四人を超える場合に限ることとしているものであること。

「地域小規模児童養護施設運営要綱」
1.目 的
 地域小規模児童養護施設(以下「地域小規模施設」という。)は、現に児童養護施設(以下「本体施設」という。)を運営している法人の支援のもと、地域社会の民間住宅等を活用して近隣住民との適切な関係を保持しつつ、家庭的な環境の中で養護を実施することにより、児童の社会的自立の促進に寄与することを目的とする。
2.運営主体
 地域小規模施設の運営主体は、地方公共団体及び社会福祉法人等であって、すでに本体施設を運営しているものとする。
3.対象児童
 この施設の対象児童は、実親が死亡したり、行方不明等で、長期にわたり家庭復帰が見込めないもの等とする。
4.定員等
 この施設の定員は、本体施設とは別に6名とし、常に現員5名を下回らないようにすること。
5.設備等
(1)日常生活に支障がないよう必要な設備を有し、職員が入所児童に対して適切な援助及び生活指導を行うことができる形態であること。
(2)個々の入所者の居室の床面積は、一人当たり3.3平方メートル以上とすること。なお、原則として、一居室当たり2人までとすること。
(3)居間、食堂等入所者が相互交流することができる場所を有していること。
(4)保健衛生及び安全について配慮されたものでなければならないこと。
6.職員
(1)地域小規模施設専任の職員として児童指導員又は保育士を2人置くこと。
(2)必要に応じ、その他の職員(非常勤可)を置くこと。
7.運営に当たっての留意事項
(1)地域小規模施設は、本体施設から援助が得られる等常に適切な対応がとれる場所で実施するものとする。
(2)施設の運営に当たっては、児童相談所、福祉事務所、児童福祉施設、児童委員、学校及び入所児童の家庭等と密接に連携をとり、入所児童に対する自立支援が円滑かつ効果的に実施されるよう努めなければならない。
(3)特に地域における近隣関係については、児童は地域において育成されるという観点に立ち、積極的に良好な関係を築けるよう努めること。
(4)本体施設から地域小規模施設に移行する児童及びその保護者に対しては、事前にこの施設の目的及び内容を十分説明することにより、円滑な施設運営が実施されるよう留意すること。
8.経費
 本施設の運営に要する経費は、児童入所施設措置費交付要綱により、別に定める保護単価を適用するものとする。

6 苦情解決制度

 社会福祉法は、従来一部の自治体や民間で実施されていた福祉オンブズマン制度を、苦情解決制度として法制度化しました。従来、社会福祉における利用者の立場は弱いものであり、利用資格の認定や福祉サービスの利用の過程において、疑問や不満があってもそれを援助提供者側に訴えることはできませんでした。苦情解決制度は、そのような利用者の不満に解決の手段を提供するとともに、福祉サービスの質的向上にも寄与しようとするものです。苦情解決制度の基本となる考え方は、次のようなものがあります。すなわち、
①福祉サービスに関する苦情は、本来当事者である利用者と事業者のあいだで自主的に解決されるべきである。しかし、
②利用者の立場や属性から、自主的な解決というだけでは適切かつ公平な解決を期待することは難しい。したがって、
③苦情解決の仕組みを、事業者の段階と都道府県の段階の二段階に設置するという考え方である。となります。
 苦情解決制度で取り扱う苦情の範囲は、
①原則として、社会福祉法にいう社会福祉事業の範囲である。
②対象となる苦情は、福祉サービスに係るサービスの内容に関する事項である。
③その範囲は、福祉サービスの利用契約の締結及び履行に関する事項である。
 苦情解決の体制は、事業所におかれる苦情受付担当者、苦情解決責任者、第三者委員で構成される。第三者委員は社会福祉法人の評議員(理事は除く)、監事、社会福祉士、民生委員・児童委員、大学教授などから選任される。苦情解決の手順は、利用者に対する制度の周知からはじまる。苦情申出人の範囲は、
①福祉サービスの利用者、その家族、代理人。
②民生委員・児童委員等、利用者に関する状況を具体的かつ的確に把握している者である。
 苦情を受け付けるのは苦情受付担当者ですが、第三者委員も受け付けることができます。苦情受付担当者は、受け付けたすべての苦情を、苦情解決責任者と第三者委員に報告します。次の段階として、第三者委員の立ち会いのもとに、苦情申出人と苦情解決責任者は話し合いによる解決に努めることになります。事業者段階で解決ができない場合には、都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会等についての情報提供を行うことになっています。
 都道府県段階における苦情解決は、運営適正化委員会において行われます。運営適正化委員会は、利用者代表、事業者代表、行政関係者、公益代表などから構成されます。苦情申出人の範囲は、事業者段階における苦情解決の場合と同様です。
 同委員会における苦情解決は、
①苦情の受付と内容の確認等
②苦情解決方法の検討
③事業調査
④助言、解決方法の決定
⑤苦情申出人と事業者の話し合いと不調の場合のあっせん案の作成と指示
⑥結果の確認
⑦苦情件数、処理結果等の公表
 という手順で実施されます。

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